2010年08月13日

No.776 『価値への欲望と世界の意味』

   たとえば精神失調などのケースで、欲しいものがまったくない、エロスがまったく働かないという人がいます。名前はなんですかと訊かれると、だれそれです、と答える。習慣的に名前を答えることはできるし、それだけの知能はある。ひとことで言えば、 「きれいなもの」 「よいもの」 への欲望 (つまり対象のエロス性) が欠如しているために、世界から 「意味」 がなくなってしまうという状態がここにあります。人間の 「身体性」 が 「美しいもの」 「よいもの」 への欲求能力を失うと、 「世界」 は人間的な 「意味」 の秩序としてあることを喪失するのです。
  人間は 「美しいもの」 「よいもの」 を求めるべきだという考えと、人間の 「身体性」 は 「美しいもの」 「よいもの」 を固有の対象とする、ということとは別のことです。前者は単なる倫理的な意見ですが、後者は人間的欲望の本質を言い表したものです。
竹田青嗣 『現象学は《思考の原理》である』





検索用kwd:◆
posted by Vigorous at 22:24| 哲学・宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
カテゴリ



注意
◆ このブログの内容は引用が中心ですが、知識の切り売りを目的としたものではなく、投稿者の備忘録として作成されています。皆さんは、ここに書かれた引用のみで満足することなく、なるべく原典に触れる習慣をつけてください。
◆ このブログでは、投稿者が独自に調査したデータや、知人から伝え聞いたエピソードなどが掲載されることがありますが、そのまま受け売りにせず、皆さん自身が事実関係を調査し、記事の真偽を見極めることができるように努力してください。
◆ ここは金言や名言を羅列することを目的にしたサイトではありません。どんな金言や名言も、羅列したとたんにただの展示物になってしまいます。長い引用も短い引用も、じっくり噛み締めて味わい、あなたの財産にしてください。アーカイブも一度にすべて読むのではなく、毎日少しずつ読むようにすると良いでしょう。



QRコード

リンク集
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。