2010年07月30日

No.762 『犯罪への興味』

   有徳な人間とはその行為が世間に災厄をもたらすよりも幸福を一層多く生み出す者のことだ、と考える人は多いがこの見解は一瞬間の吟味にも耐えない謬見である。 世間の話題になるような犯罪人、例として小金を貯えた孤独な老人を殺して庭に埋めたが、最後にその長靴のかかとに泥がちょっぴり付着していたために発覚して逮捕された男のことを考えてみよう。 彼の行動は人類の幸福増進の上で、月並みはずれた博愛主義者そこのけの貢献をする。 彼のおかげを蒙るのは、この吝嗇(りんしょく=ケチ)な老人の相続人や、犯罪を摘発して犯人を断罪した功で昇進を果たした探偵ばかりではない。 彼ら以外にも、文明世界を通じて何百万という家庭の人々が、この種のセンセーショナルな事件に興奮して、一時期彼らの紛争や退屈を忘れるという事実を思い起こしてほしい。 これほどの公衆の胸を躍らせる物は他にない。 他方この無邪気な幸福のすべてを提供した哀れな犯罪人は、当然世間から受けてよいと思われる感謝に何一つ恵まれない。 たしかに彼に正式に報償することは、多少の困難が伴う。 何となればその結果殺人が多くなって世人の興味が薄らぐ危険があるからである。 しかし私は少なくとも彼の処刑後に銅像でも作って、彼の公衆への無私の奉仕を記念することが望ましいと信ずる。 センセーショナルな犯罪への世間の一般的興味の理由が何かは、あまりはっきりしないが、私はそれが二つの要素から成ると思う。 一つは迫害の喜びであり、もう一つは殺人を犯したいが、あえて為しえない人々の心の中の空想的発散である。 
B.Russell 『人生についての断章』 (部分抜粋) 転用者は必ず原典を確認のこと!





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posted by Vigorous at 18:26| 社会学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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