資本主義国家は、徐々にではあるが、 「一般福祉」 と 「普遍消費」 の側面を推し進めていった。 その後、先進国ではその経済成長率が徐々に低下し、代わって中国やインドを代表する中進国が高度成長の時代に入っている。 つまり大きな流れとしては、 「普遍消費」 のより広範な人口への拡大が進行しているように見えていた。 この点では、さまざまな矛盾を抱えながらも、現代資本主義は最低限の 「正当性」 をもつかのように感じられていた。 だが、現在それは、次の二点で、決定的に破綻しつつあるように思える。
第一に、いまやこの 「普遍消費」 の進歩は、資本主義による地域資源・環境への絶対的 「限界」 への接近を意味している。 そうである限り、現在の資本主義は、この 「臨界域」 にゆきつく途上で、 「希少性」 (パイの奪い合い) の問題を露呈させ、おそらくは中進国を中心とした核戦争の可能性、あるいは格差の拡大によって絶望した人々を代表する勢力 (救済思想や原理主義) による核などのテロの可能性を、極度に高めるだろう。
第二に、もし先進諸国家が、金融経済の巨大化と超国家化の流れを変更することに失敗するなら、世界資本主義は、ますます 「覇権的マネーゲーム」 の性格を強め、そのゆきつく先は、資本主義システムにおける市民的制御の消失、つまりマネーの力による政治ルールと経済ルールの独占の進行という事態である。
竹田青嗣 『人間の未来』
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