2010年06月11日

No.719 『島国根性について』

   島に住む人々は、大陸に住んでいる人々から従来散々に悪口を言われてきた。 そして現に後者は多数派であるゆえに、この悪口は少数派の言い分よりもはるかに強力に今日の世間に浸透している。 島国に住む人々に関する伝統的評価は、彼らが他の人々に比して世界の他の地域の存在およびその風俗習慣について格段に無知である、というものである。 この偏見は、フランス革命からナポレオン戦争にかけて、イギリス人が大陸旅行をできなかった時期に発生した、私は考える。 しかし平和の時期はもちろん戦争中でも、もしもある国が大陸に同盟国を有するならば、島国の住民、とりわけ小島の住民は、多の国民に比して通常「島国的」と呼ばれる性質を持つことが少ない、と私は信ずる。 これとは逆に広大な大陸の中央部に住む人は、彼が長途の旅行に十分な金と暇でも持たないかぎり、概して異国人の生活や慣習にに接触する機会がはるかに稀である。 ロシアの大平原に住む百姓は、非ロシア的文物を目にする機会などまったく有しない。 ロシアの慣習、ロシアの信仰、ロシアの宣伝が彼の視野を決定する。 ロシアが世界の他の地域のそれと違った国家制度を作り上げえたのは、この事情による。 アメリカ大陸の中央部にも、これと同様の事情がある。 アメリカの大抵の人間は、アメリカ流の生活を唯一の自然な生活と、そしてアメリカの統治形態を唯一の自然な統治形態と考え、したがってアメリカ社会での弊害は、人間本性にとって不可避な弊害だけだ、と感じている。 恐らく同種の現象は、中国大陸の、否、およそ広大で均一な大陸地域の中央部ではどこでも見られるだろうそれゆえに「島国根性」は島の住人に特有な気質どころか、それと正反対に広大な内陸諸国の住民の間で、最も普通に見られる属性に他ならない。 海から遠く離れれば離れるほど、人々は「島国根性」に陥る。 文明の進歩は従来、例外なく航海民族から始まった。 フェニキア人、ギリシア人、アラビア人、イギリス人そして(南北戦争までの)アメリカ人など。 たぶん海岸の重要性を減じた鉄道の発明が、近世における文明の衰微の根本原因だと考えられる。 それが真実ならば、航空機の完成によってその回復が実現するだろう。 
B.Russell 『人生についての断章』 (部分抜粋) 転用者は必ず原典を確認のこと!





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