2010年04月26日

No.680 『英雄の模倣について』

   人間を当人の直接的衝動の指示とは別の行動へと駆り立てるさまざまの動機がある。 この誘因の中で宗教と倫理とが従来最も注目されてきたが、これと同程度に強力な誘因は他にもある。 目上の人に気に入られたい欲望、同輩や部下の人気を博したいという欲望、悪名を博そうという欲望、そしてある特定の個人の気に入ろうとする欲望等々がそれであって、これらの動機の各種の顕著な実例は、容易に歴史から取り出しうる。 しかしこれ以外にもう一つ、ある自分の好きな人間に自分を似せようという、極めて強力でしかもありふれた動機がある。 アレクサンダー大王は、この意味で多くの重要な人物に影響を与えた。 プルターク英雄伝は、ナポレオンだけでなく多くの過去の英雄たちに、栄光に到達すべき行動パターンのモデルの供給源として大いに影響を及ぼしてきた。 圧倒的に女性に多いもう一つのモデルは、受難の聖者のそれである。 自分を無抵抗で忍従的で高貴な存在と思い込んで、自分に辛く当たってくれるように、周囲に説きつける。 「善良な女性」の実例に、だれしも一度は思い当たるはずである。 もう一つの善女のモデルは、「救いの天使」である。 しかし女性がこのモデルを模倣する時は、常に自分の友人仲間の不幸を嗅ぎ出しては、自分が間違いなく立派にそれを救治してその苦痛を軽減したい、と熱望するために非常に始末が悪い。 要するに、男女の英雄や主人公の模倣は、あまり採算に合わぬ事業に思われる。 結局は自分のあるがままの存在で我慢するのが、一番よいことだ。 
B.Russell 『人生についての断章』 (部分抜粋) 転用者は必ず原典を確認のこと!





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posted by Vigorous at 22:05| 教育、心理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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