2010年02月10日

No.633 『オウムの失敗の原因』

   オウムは、身体の個体としてのアイデンティティを解除し、それを気体化していく。 それが、解脱ということでした。 ハイデッガー風に言えば、自己−外−存在になるということです。 ところで、個体のアイデンティティは何によって保障されているのか。 それは個体 (個人) の固有の利害関心、固有の理想や理念でしょう。 だから、利害関心や理念、理想、価値といったものを相対化し、そういったものへの執着を脱しなくてはならない。 
  具体的に説明します。 自己を解脱するにはどうしたらよいか。 そりためには、自己の意志を棄てなくてはならない。 どうやってか。 他者の意志だけで動けばよいのです。 それが、師 (グル) への 「帰依」 ということです。 しかし、このとき、他者の方が実体化され、絶対化されているんです。 そうして実体化された他者が、真我です。 それは、麻原という他者のうちに現実化している自我です。 解脱するためには、他者に帰依しなくてはならない。 だから、自己において解除されたアイデンティティが、いわば他者の方に蓄積されていくわけです。 だから、同一性 (アイデンティティ) からの開放は完全には果たされない。 自我を解脱するためには、本物のより大きな自我、つまり真我が必要になる。 デリダ風に言うならば、ここで、形而上学というものが回帰してきているわけです。 ここにオウムの失敗の原因がある。 
大澤真幸 『戦後の思想空間』





検索用kwd:
posted by Vigorous at 22:58| 社会学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
カテゴリ



注意
◆ このブログの内容は引用が中心ですが、知識の切り売りを目的としたものではなく、投稿者の備忘録として作成されています。皆さんは、ここに書かれた引用のみで満足することなく、なるべく原典に触れる習慣をつけてください。
◆ このブログでは、投稿者が独自に調査したデータや、知人から伝え聞いたエピソードなどが掲載されることがありますが、そのまま受け売りにせず、皆さん自身が事実関係を調査し、記事の真偽を見極めることができるように努力してください。
◆ ここは金言や名言を羅列することを目的にしたサイトではありません。どんな金言や名言も、羅列したとたんにただの展示物になってしまいます。長い引用も短い引用も、じっくり噛み締めて味わい、あなたの財産にしてください。アーカイブも一度にすべて読むのではなく、毎日少しずつ読むようにすると良いでしょう。



QRコード

リンク集
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。