2010年02月07日

No.630 『新しい紛争調停の方法』

   深刻な葛藤があったとき、たとえばAとBの間に、収拾がつかない葛藤が発生したとき、解決は、一種の委員会に委ねられる。 紛争当事者であるAとBは、直接、委員会には参加しない。 ここで、紛争当事者と委員会をつなぐ、媒介的第三者を導入する。 当事者AとBに対して、それぞれ、媒介者MとNを付けるのだ。 媒介者は、裁判における弁護士を連想させるか、その役割は、弁護士とは違う。 媒介者MとNは、それぞれの当事者を支援するので、はなく、ただ純粋で透明なメッセンジャーとして、当事者の主張をできるだけ正確に委員会に報告することを主たる任務としている。 また彼らは、委員会の結論や審議経過を、当事者に伝達することを任務としている。 したがって、それぞれの当事者は、自分につけられた媒介者に対して、自分の立場や意見を説明しなくてはならない。 媒介者をどのように決めるのか? 
  まず第一に、媒介者は、当事者と対等と見なせるもの、つまり自らも同じような紛争に巻き込まれるかもしれないと想定しうる者がよい。 第二に、媒介者は、一人の当事者に対して二人を、できれば立場が対照的であるような二人をAに対してはM1とM2を、Bに対しては、N1とN2といった具合に、付けるのが、一層望ましい。 このことによって、媒介者と当事者の間の立場の遠近が不公平を生む危険性が避けられるからだ。 (中略)
  当事者は、媒介者に、己の事情、己の意見を分かりやすく説明し、伝えなくてはならない。 媒介者は、その現前そのものによって、当事者にとっては、 「問う者」 として立ち現れるだろう。 いや、実際にも、媒介者は、当事者に問わざるをえない。 「それはどういうこと? どうしてそう考えるの?」 と。 紛争当事者は、この意志決定のシステムの中に組み込まれることによって、先行的投射そのものを、ゼロから反復せざるをえなくなるのだ。 
  このシステムによって、紛争当事者の間に合意が成り立つだろう。 紛争当事者たちは、委員会の決定を受け入れるだろう。 なぜか? 彼らはそれぞれ、媒介者との関係を通じて、それまで当然と信じていた規範的前提を、ほとんど 「事実」 のように不動のものと見なしていた前提を、偶有的なものへと転じてしまっているからである。 彼らは、自分の上に君臨していた第三者の審級が、言ってみれば詐欺師で、その超越的な場所を占めるに相応しくない偶有的なものであることを、ごく普通の常識人である媒介者を説得する過程で、実感してしまうからである。 だから、水平的な他者たちの間の 「合理的」 な討議だけでなく、垂直的な他者 (媒介者) との関係を組み入れることによって、民主主義は、新にその名に相応しいものとして再生するだろう。 すなわち、それは、真に多様性を保証しうる政体として機能し始めるに違いない。 
大澤真幸 『逆接の民主主義』





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posted by Vigorous at 09:56| 指導者、政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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