2010年01月27日

No.621 『4つの虚偽意識』

   スローターダイクは、4つの虚偽意識ということを言っています。 4つというのは、嘘と迷妄とイデオロギーとシニシズムです。 嘘と迷妄は単純なので、よくわかります。 イデオロギーは虚偽ですが、真実であると信じられている虚偽です。 ただ、それが真実であると受け取られてしまう原因がある。 つまり、イデオロギーの担い手の社会構造上の位置、階級的な位置に規定されて、それが真実に見えてしまうのです。 イデオロギーを批判するには、その虚偽性を暴露して、それが当事者には真実に見えてしまう社会的な原因まで示してやればよい。 つまり、古典的なイデオロギーまでの三つの虚偽意識に対しては、啓蒙の戦略にのっとった批判が有効です。 
  それに対して、シニシズムは、いわば一段前に進んだイデオロギーです。 メタ的な視点にたったイデオロギーだと言ってもよい。 シニシズムというのは、自己自身の虚偽性を自覚した虚偽意識なんです。 啓蒙された虚偽意識だと言ってもよい。 それは、 「そんなこと嘘だとわかっているけれども、わざとそうしているんだよ」 という態度をとるのです。 こういう態度には、啓蒙の戦略にのっとった批判は効かない。 啓蒙してやっても、はじめから、虚偽だとわかっているので意味がないのです。 
  考えてみれば、僕らの世界の中にこのシニシズムというのは蔓延しています。 典型的には、たとえば、広告、特に商品の広告がそうですね。 商品の広告、ヒットする広告は、たいていふざけているんです。 つまり、 「こんなの嘘だ」 と書いてあるわけです。 しかし、広告は一定の効果を上げるわけです。 つまり、嘘であると送り手はもとより受け手側だってわかっているのに、それがまるで真であったかのような行動が喚起されるんです。 
大澤真幸 『戦後の思想空間』





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posted by Vigorous at 20:21| 哲学・宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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