2010年01月21日

No.616 『貧困状態に至る 「五重の排除」』

   私は貧困状態に至る背景には 「五重の排除」 がある、と考えている。

  第一に、教育課程からの排除。この背後にはすでに親世代の貧困がある。
  第二に、企業福祉からの排除。雇用のネットからはじき出されること、あるいは雇用のネット上にいるはずなのに (働いているのに) 食べていけなくなっている状態を指す。非正規雇用者が典型だが、それは単に低賃金で不安定雇用というだけではない。雇用保険・社会保険に入れてもらえず、失業時の立場も併せて不安定になる。かつての正社員が享受できていたさまざまな福利厚生 (廉価な社員寮・住宅手当・住宅ローン等々) からも排除され、さらには労働組合にも入れず、組合共済などからも排除される、その総体を指す。
  第三に、家族福祉からの排除。親や子どもに頼れないこと。頼れる親を持たないこと。
  第四に、公的福祉からの排除。若い人たちには、 「まだ働ける」 「親に養ってもらえ」、 年老いた人たちには 「子どもに養ってもらえ」、母子家庭には 「別れた夫から養育費をもらえ」 「子どもを施設に預けて働け」、 ホームレスには 「住所がないと保護ができない」。 その人が本当に生きていけるかどうかに関係なく、追い返す技法ばかりが洗練されてしまっている生活保護行政の現状がある。
  そし第五に、自分自身からの排除。何のために生き抜くのか、それに何の意味があるのか、何のために働くのか、そこにどんな意義があるのか。そうした 「あたりまえ」 のことが見えなくなってしまう状態を指す。
  第一から第四の排除を受け、しかもそれが自己責任論によって 「あなたのせい」 と片づけられ、さらには本人自身がそれを内面化して 「自分のせい」 と捉えてしまう場合、人は自分の尊厳を守れずに、自分を大切に思えない状態にまで追い込まれる。
湯浅誠 『反貧困』





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posted by Vigorous at 21:41| 社会学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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