2009年12月29日

No.596 『自分を理解し直す』

   人間は 「自己自身」 を本当に理解できるだろうか、という考え方がある。 また逆に、 「ほんとうの自分」 を知れという言い方もある。 われわれの観点からはどちらもあまりよい考えとは言えない。 
  じつは 「本当の理解」 とか、 「自分自身のほんとう」 といったものはそもそも存在しない。 むしろ、人間とはつねに自分自身を理解 (=了解) し続けている存在であり、そこには単に 「よい自己理解」 と 「悪い自己理解」 があるだけだ。 あるいは、よい自己了解が人間のあり方をよくしていく、と考えたほうがいい。 
  「自己了解」 とは、 「本当の自分」 についての理解のことではない。 自分自身を、あるより適切な仕方で理解しなおすことである。 
  簡単に言って、人から愛される素質と能力や才能をもっている人は他者との 「承認ゲーム」 でまずうまくやっていける。 これは不公平な現実だが、今のところこれに文句を言ってもはじまらない。 他者との関係でなぜかうまくいかない人は自己自身と折り合っていないことが多く、自己了解を試してみる理由があるわけだ。 (中略) 
  人間の価値や感受性というものは、原則的に幼児期の親子関係の中で形成されたルールの関係の 「痕跡」 だと言える。 この関係がうまくいって、基本的な愛情関係や信頼関係が自己ルールに内面化されていると、われわれは他者との承認ゲームでうまくやっていくための基本のアイテムを身につけることができる。 他人との関係がどこかうまくいかないと感じている人は、まず自己ルールのあり方について自己了解してみる理由がある。 しかし、これをあまりに因果関係的に考えてはいけない。 うんとひどい家庭環境で育ってもぜんぜん問題のない人もいるし、その逆もある。 つまり、性格や関係態度は、いつでも環境条件と資質の合作であり、また肝心なのは、どこまでが資質でどこからが環境条件かという線引きは、原理的にできないということだ。 自己了解とは、 「真実の発見」 ではなく、あくまで自分を理解し直してみること。 それによって自分の他人への関係態度を改善できるかどうか試してみることなのである。 
竹田青嗣 『哲学ってなんだ』





検索用kwd:
posted by Vigorous at 21:00| 教育、心理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
カテゴリ



注意
◆ このブログの内容は引用が中心ですが、知識の切り売りを目的としたものではなく、投稿者の備忘録として作成されています。皆さんは、ここに書かれた引用のみで満足することなく、なるべく原典に触れる習慣をつけてください。
◆ このブログでは、投稿者が独自に調査したデータや、知人から伝え聞いたエピソードなどが掲載されることがありますが、そのまま受け売りにせず、皆さん自身が事実関係を調査し、記事の真偽を見極めることができるように努力してください。
◆ ここは金言や名言を羅列することを目的にしたサイトではありません。どんな金言や名言も、羅列したとたんにただの展示物になってしまいます。長い引用も短い引用も、じっくり噛み締めて味わい、あなたの財産にしてください。アーカイブも一度にすべて読むのではなく、毎日少しずつ読むようにすると良いでしょう。



QRコード

リンク集
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。