2009年12月20日

No.588 『ラフジャッジの危険性』

   裁判員裁判では、限定された事項の審理に必要な日数があらかじめ裁判員の 「就業予定期間」 として設定されます。 目安とされているのは三日で、ほとんどの事件の審理が一週間以内に終ることが前提とされています。 裁判員の役目をまっとうするのに会社を休まなければならなとしても、この程度ならそれほど負担は大きくありません。 しかし、刑事裁判の真相というのは決して単純なものではありません。 審理の途中で予想していなかった重要な争点が明らかになることも珍しくありません。 死刑や無期を法定刑に含む重罪事件はなおさらです。 こういった場合、新たに出てきた重要な争点に関する審理を行わなければならないのは当然です。 しかし、あらかじめ設定した 「就業予定期間」 を越えて審理を行うことに対しては、仕事を休んで裁判に参加している裁判員は相当な抵抗を示すでしょう。 審理継続のためにはそのまま会社を休み続けてもらわなければなりませんが、それが難しければ一部の裁判員の組み替えを行うしかありません。 その場合、新たに参加した裁判員は、すべての審理に裁判員として参加していたわけではありません。 そのような中途半端な状態で有罪か無罪かを決めたり量刑の判断を行ったりすること自体が、大きな問題になるでしょう。 結局、審理の過程で出てきた重要な争点について、裁判員の就業期間の制約から十分な審理が行われないまま、裁判が終結することになりかねません。 
  死刑、無期懲役を法定刑に含む重罪事件について事実認定と量刑の判断を適切に行うことには、相当な負担が伴うのは当然です。 そのような判断を裁判員に行わせるのであれば、裁判員にもそれ相当の覚悟を求める必要があります。 その負担を無理に軽減しようとすれば、ラフジャッジ (粗雑司法) の恐れを生じます。 そういう深刻なジレンマに直面せざるをえないのが、今回の裁判員制度なのです。 
郷原信郎 『思考停止社会』





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posted by Vigorous at 15:36| 社会学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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