裁判員制度が一度導入されたら、これほど国じゅうで大騒ぎをして導入した制度を根本から見直すことは容易にはできません。 それがあり得るとすれば、冤罪や、真犯人が罪を免れる 「誤判」 が相次いで表面化した場合ですが、裁判の誤りが動かぬ証拠によって客観的に明らかになることは稀です。
重要なことは、裁判員には、裁判員裁判の経緯などについて、一生守秘義務が課されるということです。 裁判員裁判がどのように行われ、どのように結論が出されたかを裁判員自身が明らかにすることは禁止され、違反に対しては罰則が設けられています。 結局、裁判員裁判の内実が裁判員経験者の口から明らかにされることはなく、司法関係者も内実を暴露できないまま、歪んだ裁判員制度の歴史が積み重ねられ、それが、日本の刑事司法の根幹を蝕んでいくことになりかねません。
郷原信郎 『思考停止社会』
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