2009年11月08日

No.560 『多文化主義と原理主義』

   「物語る権利」 を擁護するのは、典型的には多文化主義である。 「真理への執着」 として現象しているのは、たとえば原理主義だ。 多文化主義の出現は、今日において、無条件に普遍的と見なしうる正義や真理は存在しえない、という断念の上に立っている。 このとき可能なのは、それぞれの立場の、それぞれの人が、個別でユニークな物語 (虚構) をもつことだけだ、ということになる。 そうである以上、各自のアイデンティティの根幹を規程するような個別の物語を、互いに蹂躙することのないように尊重すべきだとするのが、多文化主義である。 
  多文化主義の見地から捉えると、特定の法や規範の普遍性に執着する原理主義は、時代遅れの反動のように見える。 多文化主義にとっては、原理主義は、およそ考えうる限り、最も許容しがたい態度である。 つのり原理主義は、多文化主義の全的な否定だ。 だが、どちらもきわめて現代的な現象であるとするならば、これほどまでに相容れない二つの立場が、同じグローバルな社会空間の中に共存しているのはなぜなのか。 このことが社会学的な疑問を呼ぶ。 
大澤真幸 『不可能性の時代』





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posted by Vigorous at 10:41| 指導者、政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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