2009年10月04日

No.532 『多様な信念対立を克服するカギ』

   現象学的な 「真理」 概念、 「認識」 概念がもたらす重要な帰結を、箇条書きにして整理します。 

  @ 人間の認識は、共通認識の成立しえない領域を構造的に含んでおり、そのため、 「絶対的な真理」 「絶対的な客観」 は成立しない。 
  Aしかし逆に、共通認識、共通了解の成立する領域が必ず存在し、そこでは科学、学問的知、精密な学といったものが成り立つ可能性が原理的に存在する。 
  Bおよそ人間社会における宗教、思想 (イデオロギー) 対立の源泉は、この領域の原理的な不一致可能性に由来する。 
  Cしかし、この領域の基本構造が意識され、自覚されるなら、そういった宗教、思想 (イデオロギー) 対立を克服する可能性の原理が現れる。 すなわちそれは、世界観、価値意識の 「相互承認」 という原理である。 
  Dこの世界観、価値観の 「相互承認」 は、近代以降の 「自由の相互承認」 という理念を前提的根拠とする。 

  「認識」 という概念にとって重要なのは、もはや 「主観 (認識) 」 が 「客観 (世界そのもの) 」 に合致 (=一致) するか否かということではなくなる。  「認識」 とは、 「真理」 を発見してゆくことではなく、人間が世界についての 「共通了解」 を関係的に作り出してゆくことであり、近代科学の広範な成立はまさしくそのような努力の進展であったことも理解されます。 「認識問題」 の本質は、世界観や価値観が必然的に多数性をもつことを理解すること、またそのことによって、そこから生じる確執、相剋は、 「真理」 つまり絶対的な 「正しさ」 の発見ではなく、多様な世界観の 「相互承認」 と 「ルール設定」 という原理によってはじめて克服されうることを理解すること、に帰着するのです。 
竹田青嗣 『現象学は《思考の原理》である』





検索用kwd:
posted by Vigorous at 17:38| 哲学・宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
カテゴリ



注意
◆ このブログの内容は引用が中心ですが、知識の切り売りを目的としたものではなく、投稿者の備忘録として作成されています。皆さんは、ここに書かれた引用のみで満足することなく、なるべく原典に触れる習慣をつけてください。
◆ このブログでは、投稿者が独自に調査したデータや、知人から伝え聞いたエピソードなどが掲載されることがありますが、そのまま受け売りにせず、皆さん自身が事実関係を調査し、記事の真偽を見極めることができるように努力してください。
◆ ここは金言や名言を羅列することを目的にしたサイトではありません。どんな金言や名言も、羅列したとたんにただの展示物になってしまいます。長い引用も短い引用も、じっくり噛み締めて味わい、あなたの財産にしてください。アーカイブも一度にすべて読むのではなく、毎日少しずつ読むようにすると良いでしょう。



QRコード

リンク集
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。