2009年09月29日

No.528 『欠如の欠如』

   『エヴァ』 の中に、人類補完委員会、人類補完計画というのが出てきます。 人類補完計画という謎の計画が、 『エヴァ』 の中で進行している。 僕は初め、人類補完計画というのは、人類の数が極端に減ってしまったので、何とか人口を増やす計画かと思ったんです。 現にセカンドインパクトによって地球の人口は何分の一かになってしまったという話になっていますから。 が、そうじゃない。 人類補完計画は、もっと別の意味で、つまり精神的に欠けているということを前提にした計画なんです。 その欠けているものを補完してやらなくてはいけない。 欠如を補完した完全な人類に進化させる計画、これが人類補完計画です。 この補完のことを、アニメは、擬似生物学的に、群体としての人類を、完全な単体へと進化させること、つまり個々人がバラバラに生きている人類を、全体として単一の個体にしてしまうことだと、説明しています。 
  整理するとこうなる。 まず理想の時代は、欠如を前提にしたスタイルの時代です。 ついで、欠如の不在の段階がくる。 そして90年代の、つまり 『エヴァ』 の時代には、再び若者は、欠如を覚えていることになる。 しかし、この三番目の段階では、何が欠如しているのか、思うに、具体的に特定しうる何か、たとえばお金だとか、社会主義のような来るべき理想の社会とかは、何も欠如していないんです。 欠如しているとすれば、それは欠如そのものです。 何も欠如していないことに、欠如感を覚えているんです。 これは自己矛盾的な欠如ですね。 欠如が克服されたとき、今度は、欠如がまさに不在であるということに欠如を覚える段階がやってくるんです。 それが現在です。 
大澤真幸 『戦後の思想空間』





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posted by Vigorous at 21:57| 社会学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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