2009年08月25日

No.496 『差別を捉えなおす』

   一般的に言って、つい差別してしまう体質の人は、自分の自然なアイデンティティに不安があるからだと言える。 自分なりの自己価値をそれなりに持っている人は、他人を差別する内的な理由が少ない。 自己価値に不安があるほど、そういう機会があると無意識に他人の価値を相対的におとしめ、自分のアイデンティティを引き上げようとするのだ。 だからこういう態度はその人自身にとっても、一つの危機でもあるといえる。 ぜなら、もし自分が世間的な一般価値からずれてしまったとき、決定的な打撃を被ることになるからだ。 勉強できるのが偉いとか、金持ちが偉いとか、そういう一般価値の中だけに自分を投げ込んでいると、自分が一般価値の秩序からこぼれて挫折したときには、自分を救うことができない。 違う考え方ができないからである。 要するに、その人は狭い価値観、世界像の中に自分を閉じ込めている。 つまり世間一般ルールをわれ知らず絶対視しており、うまく行っているときはいいが、少しでもこの価値規範から外れると結局自分自身を苦しくするのだ。 
  差別は、社会的な問題としては、ルールや制度の問題として考えなくてはいけない。 しかし自分の問題としては、これをむしろ、自己アイデンティティや価値観について自分がどのような関係態度をとって生きているか、といった問題として捉え直したほうがいい。 そうでないと、差別の問題は、しばしば、 「差別語」 など特定の差別現象批判や、差別はあってならないし差別する人は悪い人間であるといった、ごく一般的な差別説教としてだけ流通することになるのである。 
竹田青嗣 『哲学ってなんだ』





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posted by Vigorous at 20:04| 教育、心理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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