2009年08月16日

No.0487 『理論負荷性』

   医者がX線写真をライトにかざすとき、彼が診ているものは、胸の映像というよりはむしろ彼らの心の中にあらかじめ用意されている 「理論」 なのである。 もし、結核であれば、左右の肺下部のくさび状先端にわずかに水の線が見えるはずであり、もしガンであれば普通とは違った毛細血管の走行が現れるはずだ。 彼らの目にはそのような 「理論」 が前もって負荷されている。 しかし、データAを目にしているすべての観察者が、まったく同じ客観的事実A'を見てとっているわけではない。 一見は、百聞に勝るかもしれないが、その一見がもたらすものは異なる。 そしてその異なり方、つまりデータが一体何を意味しているのかという最終的なアウトプットは常に言葉として現れる。 その言葉を作り出すものが理論負荷性というフィルターなのである。 
福岡伸一 『生物と無生物のあいだ』





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posted by Vigorous at 12:15| 自然科学、環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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