2009年08月05日

No.0477 『PCRの原理』

   PCRの原理は実にシンプルである。 まず、複製したいDNAが入ったチューブを短時間100℃近くまで加熱する。 すると、AとT、CとGを対合させていた結合が切れて、DNAはセンス鎖とアンチセンス鎖に分かれる (加熱しただけではDNAの鎖自体は切れない) 。 このあと、一気に50℃にまで冷やされる。 そこからまた徐々に72℃まで加熱される。 
  チューブの中にはポリメラーゼと呼ばれる酵素とプライマー (短い合成一本鎖DNA) 、そして十分な量のA、T、C、Gのヌクレオチドがあらかじめ入れられている。 ポリメラーゼは、センス鎖の一端に取り付き、プライマーの助けを借りて、センス鎖を鋳型にして、対合するDNAをA、T、C、Gでつむいでいく。 同じことがアンチセンス鎖でも起こる。 つまりアンチセンス鎖を鋳型に、新しいDNA鎖がA、T、C、Gによって合成されていく。 
  合成反応は一分程度で終る。 これが完了すると、DNAは2倍に増える。 そこで再び100℃に加熱され、まったく同じサイクルが繰り返される。 1サイクルはほんの数分である。 もとのDNAは、10サイクルの後には1024倍に増え、30サイクル後にはなんと10億倍を突破する。 この間、わずか2時間足らず。 
  PCRマシンは、その実、温度を上げたり下げたりするだけの装置にしか過ぎない。 しかしそのとき、チューブの中でDNAは連鎖反応的に増幅を繰り返すのである。 
福岡伸一 『生物と無生物のあいだ』





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posted by Vigorous at 21:35| 自然科学、環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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