2009年07月31日

No.0472 『なぜ我々は欲求不満か』

   もし現代に対する告訴がなされるとすれば、万事か昔よりも良くなったのに、今の人間が必ずしもそれに応じた一層の満足を感じないという点であるに違いない。 現在の我々は過去のどの時期よりも、幸福な生活の必要条件と従来考えられてきたものを実現している。 現在の不景気にも関わらず、それでも昔に比べれば、我々は楽しみや贅沢にはずっと恵まれている。 とりわけ娯楽は豊富で、まず退屈になる余地がない。 だが、今の社会に生きている人間が昔よりもはるかに幸福かどうかは疑問である。 人生における持続的な有意義な目的を見出すことの困難さが現代の厭世観の原因だ、とするのが通説である。 しかし私はこれが現代の正確な分析であるかどうか、少なくともそれが問題の核心に迫っているかどうかの点で疑問を持つ。 人生の喜びと目的の喪失それ自体が、何らかの生理的な原因を持っていると私は信ずる。 本当に健全な肉体の持ち主は何か打ち込める対象を見出すのに反して、胃弱な人や腺病質な人は、各種の疑念と絶望の暗い考えに自然ととらわれるものである。 もし現代の厭世主義者たちが、激しい身体の運動と質素で健全な食事、長い睡眠時間という厳格な摂生法を受け入れるならば、彼らは物事が何によらずやるに値するものであることを発見し、自分も何かまともなことをすることができるという希望を抱くであろう。 本を書いたり何らかの形で人に教えたり、思想を広めたりしたいと考える人は、ぜひ食事前に一時間ほど穴掘りその他の肉体労働に従事するとよい。 そうすれば朝食は非常に美味となり、その日は一日中、世の人のことがすべて空虚だと思う余地はなくなろう。 もしも私の考えが正しいならば、現代人の絶望を直す仕事は、医者の任務であって、哲学者のそれではない。 残念ながら、私は哲学者であって、医者ではない。 
B.Russell 『人生についての断章』 (部分抜粋) 転用者は必ず原典を確認のこと!





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posted by Vigorous at 21:29| 人生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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