2009年05月16日

No.0406 『形而上学と理性』

   知性が実際に働くための根本法則 (原則) があります。 ここで言う根本原則とは、 「引力の法則」 「作用反作用の法則」 等々といった経験的法則ではなく、あらゆる経験的法則の根底にある法則のことです。 その意味で、法則の法則といえます。 
  最も代表的な根本法則は、@「因果法則」 です。 分かりやすく言えば、原因が結果を決定する、原因は結果に先立つ、原因のない結果はない、等々となるでしょう。 
  また、A「すべての直感は外延量である」 という根本法則があります。 外延量とは、広がりを持つ大きさのことです。 直感の形式は時間と空間でした。 直感がその都度、 「昨日〜今日」 という時間的広がりと、 「縦・横」 といった空間的な広がりを持つ大きさであること自体は、その都度具体的なデータを持たずにもアプリオリに確定しています (直感の公理) 。 
  さらにまたB「感覚の対象は内包量を持つ」 という根本法則があります。 「内包量」 とは 、時間・空間的な広がりではなく、 「度合い」 として表される大きさのことです。 感覚を伴う個々の知覚は必ず経験的であって、まったくアプリオリではありません。 しかし、 「感覚の対象は度合いを持つ」 ということだけは、予めアプリオリに認識できることです (知覚先取的認識) 。 これらの根本法則はすべて、時間・空間を座標軸とする 「現象」 という座標系の中でのみ成立します。 逆にいえば、現象世界全体はこれらの根本法則によって成り立っているのです。 
  ところが、理性はその本性によって 「なぜ」 のそのまた 「なぜ」 等々と問い続け、絶対を求めて邁進し、ついには時間・空間からなる現象世界を越境します。 しかも、そこにも時間・空間が成り立つと思い込みます。 こうして、理性は極限にいたることになります。 そこに、 「素質としての形而上学」 の問題が生じます。 それらは、現象世界と密着したカテゴリーに対して、現象世界を離れた 「理念」 と呼ばれます。 いまあげた理念は伝統的な形而上学の桧舞台でした。 ところが、そこでは人間の健全な認識に欠かせない時間・空間という条件が正しく満たされていないため、当然トラブルを生じます。 結論から言えば、すべての理念に関する形而上学が脆くも瓦解します。 
  理性に残された仕事とはなんでしょう。 まず、重要な点をあげれば、理性は自由、すなわち第一原因の能力として、道徳の基盤をなすということです。 「自由」 が第一原因であるということは、理性が単に現象世界の中に原因を追究し、因果関係を求めることではなく、理性自らが原因となって作用するということです。 その場合、 「自由」 は、世界に向けて物事をはじめて開始する、文字通り第一原因を意味します。 なぜなら、原因とは時間的に先立つものですが、理性自身は時間を超えており、その支配から開放されているため、もはや、時間的に先立つそのまた原因を持たないからです。 そのような第一原因から生じるのが意志決定による人間の行為、とりわけ道徳的行為です。 
  さらにはこうです。 人間の 「知性」 の営みにはさまざまな領域があります。 数学、物理学、論理学、等々です。 それらは互いに他の学問とは無関係にも営まれ、厳密化され、それなりに立派な成果を収めるでしょう。 「理性」 はそれらのさまざまな知性の営みの垣根を超えて、それを理念によって統制し、より高い目的に向けて体系化するのです。 これによって、トラブルの元であった理念は、新たに建設的役割を担うことになります。 
左近司祥子編 『西洋哲学の10冊』





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posted by Vigorous at 22:00| 哲学・宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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