2009年04月05日

No.0371 『データベース消費』

   九十年代、メディアミックスの手法がオタク系市場の中心になると、諸企画を統一させる根拠は、作品 (原作) よりもキャラクター (登場人物) になってくる。 消費者の関心も、作品だけではなく、あるいは作品以上にキャラクターに向けられる。 そのキャラクターが、オタクたちによって、作品や企画を超えてすべてデータベースに整理されていくのだ。 その際、重要なことは、キャラクターが、 「萌え要素」 に分解されるということである。 「キャラ萌え」 とは、キャラクターによって欲望が触発されることを意味するオタク独特の用語であり、 「萌え要素」 とは、その欲望の触発に関与した、キャラクターの類型的な特徴のことである。 たとえば、 「でじこ」 の場合、 「猫耳」 「触覚のように刎ねた髪」 「緑色の髪」 「鈴」 「しっぽ」 「メイド服」 「大きな手足」 等の萌え要素に分解することができる。 キャラクターは、萌え要素を準拠にして、個々の作品やシリーズ、作者を超えて、完全に横断的に、データベースに蓄積、整理されていくのである。 (中略) 
  データベース構築への情熱を支えているのは、そこから任意の物語を派生させることができるような、普遍的な物語の収蔵庫への欲望なのだ。 だから、データベース消費は、求められている普遍性の水準が上昇したときに現れるのである。 それは、物語消費からの連続的な延長線上に位置づけられる。 振り返ってみれば、1987年から88年にかけての 「ビックリマンチョコ」 のキャラクターシールの収集は、コンピュータ普及以前のデータベース構築の試みだったのではないか。 ビックリマンシールの裏には 「ウワサ」 と称する、物語のごく小さな断片が記されていた。 消費者たる子供たちは、これに刺激されて、全貌を現してはいない物語世界への想像を掻き立てられたのである。 
大澤真幸 『不可能性の時代』





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posted by Vigorous at 11:32| 社会学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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