2009年03月18日

No.0341 『善悪と真理』

   私たちは必ずしも明確な自覚を持って自らの行為を選んでいるとは限りません。 気づいたときにはすでに特定の選択肢を選ばざるをえない状況に追い込まれていることもあります。 このように、私たち人間は、アウグスティヌスが 「習慣の流れ」 と呼ぶ大きな力の中にあります。 さらに深刻なのは、この習慣の力は、私たちに悪を選ばせることさえしばしばあるということです。 人間が長い間かけて築き、親から子へ、社会から個人へと受け渡される言語とか習慣は、それ自体がすでに善悪の判断を含んでいて、知らず知らずのうちに、あるいは強制的に、私たちに悪を選ばせます。 人間は、この習慣の力の前に、自らの自由を手放してしまうという弱さをもった存在です。 このことにアウグスティヌスはきづきました。 弱さをもっていること自体は、仕方ないことです。 しかし、人は自分の弱さに気づいていないばかりか、自分の力を過信しています。 このことが問題なのです。 
  アウグスティヌスは言います。 「すべての人間が真理を求めている。 『きみは騙されたいか』 とたずねられて、 『騙されたい』 と答える人は一人もいないことがその証拠ある。 」
  すべての人が心理を愛しています。 真理を嫌っている人はいません。 他人を騙そうとしている人でも、自分だけは真実を知っていたいと願っています。 ところが、人は真理を愛しているがゆえに、かえって自分の誤りが指摘されることを憎み、突きつけられた真実を認めようとしません。 人間の弱さはこうした倒錯を引き起こします。 真理の尺度は自分ではありません。 しかし、人は真理を愛するがゆえに、自分が真理の尺度であろうとします。 アウグスティヌスにとって、このような思いあがりこそが最大の過ちでした。 
左近司祥子編 『西洋哲学の10冊』





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