2009年02月15日

No.0280 『希望と恐怖』

   生活における変更不可能な要素は、われわれの心を動かさないが、変動する要素は希望と恐怖を生み出す。 人間の感情は確かなものよりも不確かなものに向けられるから、人間の感情的な性格は、その人が住んでいる社会組織の影響を直接受けて決定される。 収入が変動しなければ、人間は金銭についてあまり考えないし、社会的地位が変わらなければ家柄を鼻にかける俗物などにならないだろうし、自国が強大であり外敵も歯が立たないならば、熱狂的な愛国者にならないであろう。 別の価値尺度を取り上げてみよう。 人間は、もし自分がどうしようもなく愚かと信ずるならば、知的向上心を持たないであろうし、自分が美的センスを持ち合わせていないと知れば、芸術の世界で名を揚げようとも思わないし、自分がどうしようもなく平凡な人間だと自覚しているならば、名声など追い求めないであろう。 人々は、以前よりも金のことで頭が一杯である。 昔は、この現象はごく一部の人に限られていたが、今ではほとんど世間一般のことになっている。 経済的な不安定の当然の成りゆきで、人間は激しい生存競争における成功の度合いによって崇拝されるようになった。 ほとんどの人間は生存競争から逃げようとしないし、逃げるものは軽蔑される。 つまり生存競争から逃げる者は、巨富よりもほかのものを尊んでいるのではなく、憶病であるがゆえに逃げていると解釈される。 芸術家でさえかせいだ金額で判断されるようになった。 金額ではかえられない価値は、軽んぜられるようになる。 あらゆる繊細な感受性は、競争におけるハンディキャップとなり、失敗の烙印と見なされる。 100年前までは、金持ちは、ある程度の教育と教養を身につけていた。 それなしには、彼らは尊敬されなかった。 今では教育と教養は以前にもまして、貧乏人だと軽蔑されている学校の先生や大学の教授だけのものとなり、したがって金持ち階級の教養のレベルは近頃とくに低下している。 
B.Russell 『人生についての断章』 (部分抜粋) 転用者は必ず原典を確認のこと!





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