2009年02月07日

No.0263 『老年の脅威』

   われわれの体全体が固くなるにつれて、われわれの習性も固定化してくる。われわれはいつも変化が必要なのだ、と口癖のように言うくせに、そのことを頭の中では分かっていても、現実における変化には耐えられない。医療技術が少しでも進歩すれば、世の中はそれだけいっそう保守的になるに違いない。あと百年もすれば、人口のほとんどが八〇歳以上になるだろう。そのような老人はよたよたで、ぶづぶつとわけの分からぬ言葉をつぶやき、頭は完全にぼけているが、富と、世間の尊敬と、権力は持っている。彼らに取って代わる六〇代の熱意ある後輩がいるのに、彼らはすべての重要なポストにしがみつくであろう。そのような世界では、進歩はまったくあり得ない。 それではどうしたらよいか。このような危機を予見したスウィフトは、人並みはずれて長生きすると思われる人間は八〇歳で投票権と財産を剥奪されるべしと示唆した。スウィフトの示唆はさすがであるが、すでに老人たちはしっかりと権力を握って、スウィフトのこの考えの実現を食い止めてしまうだろう。六〇歳以下のすべての医師は打って一丸となって若者を擁護し、高年層の寿命を伸ばすと思われる一切の医学的研究を阻止するように働きかけるべきだと、私は提案する。私ならば、彼らを南海の島に送ってしまう。そこでは酒は飲み放題、葉巻はたっぷり与えられ、厳しい検閲制度で特別な新聞が発行され、現在の世界は破滅に向かいつつあり、どこもまったく改革がなされていない、という情報が与えられる。このようにすれば、この種の発達した医療技術の犠牲者のたそがれの時期もバラ色になり、他方、老人どもが若者を抑圧したり、世界の新しい状況への対応を妨げる恐れはなくなるだろう。
B.Russell 『人生についての断章』 (部分抜粋) 転用者は必ず原典を確認のこと!





検索用kwd:バートランド・ラッセル、高齢化社会
posted by Vigorous at 17:19 | TrackBack(0) | 人生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/113840986

この記事へのトラックバック
カテゴリ



注意
◆ このブログの内容は引用が中心ですが、知識の切り売りを目的としたものではなく、投稿者の備忘録として作成されています。皆さんは、ここに書かれた引用のみで満足することなく、なるべく原典に触れる習慣をつけてください。
◆ このブログでは、投稿者が独自に調査したデータや、知人から伝え聞いたエピソードなどが掲載されることがありますが、そのまま受け売りにせず、皆さん自身が事実関係を調査し、記事の真偽を見極めることができるように努力してください。
◆ ここは金言や名言を羅列することを目的にしたサイトではありません。どんな金言や名言も、羅列したとたんにただの展示物になってしまいます。長い引用も短い引用も、じっくり噛み締めて味わい、あなたの財産にしてください。アーカイブも一度にすべて読むのではなく、毎日少しずつ読むようにすると良いでしょう。



QRコード

リンク集
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。