2009年01月24日

No.0236 『脳とカネ』

   カネというと、何か現実的なものの代表という風に思われがちですが、そうではない。 カネは現実ではない。
  カネは、脳が生み出したものの代表であり、また脳の働きそのものに非常に似ている。 脳の場合、刺激が目から入っても耳から入っても、腹から入っても、足から入っても、全部、単一の電気信号に変換する性質を持っている。 これはまさにカネも同じです。 目から入っても耳から入っても、一円は一円、百円は百円と、単一の電気信号に翻訳されて互いに交換されていく、ある形を得たものです。
 カネのフローとは、脳内で神経細胞の刺激が流れているのと同じことです。 これを「経済」と呼称しているに過ぎない。 この流れをどれだけ効率よくしようか、ということは、脳がいつも考えていることです。 経済の場合にはコストを安くしてやろうという動きになる。
  かつては、カネを貯めて大きな家を作りたい、クルマを買いたいと、カネと実物が結びついていた。 もちろん、今でもそういうことはあるにせよ、どんどん現実から遊離していって、今は信号のやりとりだけになっている。
  結果として、カネを使う権利だけが移動しているということです。
養老孟司 『バカの壁』





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