2009年01月12日

No.0212 『ピカソの絵』

   ピカソの絵は、一見メチャクチャに見えるかもしれません。 しかしよくよく見ていくと、やはり普通の人間ではない、天才の手によるものだ、ということがよくわかります。 例えばキュービズム時代の絵は空間配置がメチャクチャです。 鼻が横を向いていて、顔が正面を向いているというのはザラですから、メチャクチャだと見られても仕方がない。 しかし、あれは一つひとつのデッサンはかなり正確に描いている。 つまり、モデルである人間や物をあちこちから見て描いたものをゴチャ混ぜにして合体させたようなものになっています。
  通常、デッサンに必要な空間配置というのは、視覚の大事な四つの機能のうちの一つです。 それが壊れたままであると、その人にとって世界は、ピカソのキュービズムの絵になってしまいます。 まちろん、ピカソ自身は日常生活を普通に営んでいたし、ご存知の通り、初期には非常に正統派の分かり易い絵を残しています。
  では、彼はどうやってキュービズムの絵をかけたのか。 それは別に、一人のモデルをあちこちから見てデッサンしたものをツギハギであとで組み合わせた、ということではありません。 おそらく彼は意識的に、絵を描く際に、ノーマルな空間配置の能力を消し去ったのです。 ピカソはそれを意識的に行っていた。 病気になると、ある能力が消えて、ひとりでにピカソの絵みたいなものを描くケースがありますが、ピカソ自身は、健康なのに意図してああいう絵が描けた。 おそらく彼は自分の意識野というものを非常に上手にコントロールできていた。 頭の中のリンゴのイメージを自在に変えるということは普通の人はできない。
  空間配置がグチャグチャな絵を頭の中で思い浮かべてみろと言ったって、特定の機能を落とすということはできないでしょう。 当然、目から入ってくれば、ひとりでに普通の像が脳の中で形成されてしまう。 そこを上手に抑制して、一ヶ所をポーンと消すと、ああいう絵になる。 それを経験的にちゃんと作ることができるというのは、大変な能力です。
  この種の天才は自分の能を操作できる。
養老孟司 『バカの壁』





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posted by Vigorous at 19:28 | TrackBack(0) | 芸術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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