2008年12月21日

No.0167 『計算解析の落とし穴』

   大型コンピュータの登場は、解析の範囲を一挙に拡げることになったのです。 それによって、科学は虚構的な領域に入り、従来の方法論からの変質が現実に進行しているのです。
  そのよい例が、 「コンサーバティズム」 です。 『コンピュータ計算に基づく予測と、それに伴った技術上の設計においては、現実の条件を正しく反映しているという保証はないから、控えめ(コンサーバティブ)な仮定に基づいて、つまり安全性へのゆとりを多めにとって考えていこう』ということです。
  コンピュータ解析に頼った虚構的、観念的な「科学」の例は、原子力の分野に多く見ることができますが、その典型は原子炉の事故解析でしょう。 原子炉は爆発的に崩壊し、放射能を環境に撒き散らすという潜在的危険性を宿しています。 その可能性は果たしてどの程度であり、その規模や被害はどの程度か、というのは誰しも気になるところであり、原子力がはたして人類にとって許容できるものなのかどうなのかという肝要な問題に、直接的にかかわっているといえます。 この大事故の可能性の評価も、実証的な方法に基づいて行うことは困難で、大型コンピュータによる確率計算によって行うしか手がありません。  (中略) この解析では、いろいろな事象の組み合わせが環境への放射能放出につながるように悪い方向に働いたとき、大事故が起こると考えます。 その確率を各事象の発生確率の掛け合わせとして求めようというのが、この解析法のやり方です。 これには、個々の構成機器の故障率のデータが必要で、その掛け合わせが、一つの事象の確率を与えることになるわけです。 機器の故障率が過去のデータから分かっているときには、そのデータを用い、不明のときは、類似の化学プラントなどのデータに基づいて推定した故障率を用います。 ところが、個々の機器の故障の確率を求めるとか推定する、というのは、現実的には想像を絶する困難な仕事です。 このやり方の場合には、いつも計算の指導原理というか方向付けが必要となってきます。 そして、計算が、観念的であればあるだけ、よりあからさまな方向づけ (計画主導者に満足してもらえる数字を出すことなど) が必要となってきます。 もちろん、その解析結果が、現実を反映しているという保障は何もないのです。
高木仁三郎 『科学は変わる』





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posted by Vigorous at 20:40| 自然科学、環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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