2008年11月12日

No.0069 『マラソンにおける戦術』

   追う側は、前を走る選手と自分の距離が少しでも近くなってくると、前の選手は自分よりも遅くなったと考えるものです。人間の脳は自分にとって都合のよい方向に働きやすいので、前の選手との距離が詰まってくるとそれだけで、相手のペース配分などを考慮せずに相手は疲れてきてスピードが落ちている、と考えてしまうのです。  (中略)  この追う側のイメージ記憶を逆用するおそろしい作戦があります。追われる側が速度を落として、わざと追い越させるのです。自分の方が速いと確信している追う側は、それ見たことかと喜んで追い越します。ところがその瞬間、追い越されたほうが温存した力を爆発させ、思いきりスピードを上げて抜き返すのです。これをやられると抜き返されたほうは、一気に戦闘意欲を失うことがあります。自分より弱いと思っていた相手がこんなに強かった、自分は間違っていた、もうだめだ、と思った瞬間、心と連動するモジュレータ神経群がダメージを受け、脳が著しく疲労すると同時に運動機能が極端に低下するからです。運動能力にもっとも影響を与える臓器は脳であり、試合中にその疲労が限界に達することは致命的です。これが怖いために、抜き去るときには抜き返されないよう差がつくまで一気に抜くことが長距離走では基本になっているほどです。こうした罠にはまらないためには、普段から自分にとって都合の悪いことでも正確に人に言える力を鍛えておくことです。そうすることで、あの走りは自分のエネルギーを消耗させながら追いつかせたあと、一気に潰そうとする作戦ではないか、と自分に不利益な考え方も自然にできるようになり、自分が出せる能力の範囲におさまるペース配分のなかで作戦を立てることができるようになるのです
林成之 『勝負脳の鍛え方』





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posted by Vigorous at 21:50| 戦略、スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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