父親の影響を受けて偉大な業績を残した人の例は数多い。 例えば、ハンニバル、フレデリック大王、モーツァルト、J・S・ミルは良い例である。 父親の愛は必ずしも必要でなく、必要なものは、幼児期からの技術指導、限定された進路への注意力の集中、名を挙げようとする覇気等々であるが、このような教育にもとづく業績は当然父親と同じ種類のものとなる。 現代の世界は、このうな教育を施す機会をほとんど与えない。 この理由からも、古いタイプの傑出した人物は非常に稀になる。 他の追従を許さぬ偉業を成し遂げるには並々ならぬ天分を必要とするのは勿論であるが、それに加えて、世界を征服する野望とか、カタルゴが受けた災厄の復讐の執念のような、一途で単純な情熱を必要とする。 比類なき名声を勝ちうるには、精神力と集中と情緒と知性面での目標の限定が必要であり、万遍ない教育や幅広い興味は必要でない。 すべての若者が、同じ環境で生活し、同一の基準を受容せねばならぬ世界では、このような条件は容易に生まれない。 名を表すには多様性が必要であり、画一的な教育は将来平凡な大人を生む傾向を持つ。 従って今後は、昔とちがって個人的名声を博する人物は稀になろう。
B.Russell 『人生についての断章』 (部分抜粋) 転用者は必ず原典を確認のこと!
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